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La discesa di Aclà a Floristella
     アクラ、フロリステッラ硫黄鉱へ

イタリア映画 (1992)

フランチェスコ・クジマーノ(Francesco Cusimano)主演の苛酷な少年労働を描いた映画。舞台は1930年のシシリー島。男爵家の所有するフロリステッラ硫黄鉱で、多くの大人に混じり、12才になったのを契機に働かせられことになった少年の肉体的苦労と心理的苦悩を描いている。海外発売のDVDはビデオ画像の下手なデジタル化なので画質は非常に悪い。

アクラの家族は、父を筆頭に上の兄2人が硫黄鉱で働いている。土曜の夜に帰宅し、月曜の明け方にはもう出かける、つまり、一旦鉱山に入ったら、週末まで坑道の中で5夜連続で寝泊まりするというひどい労働環境だ。しかも、寝泊まりといっても部屋があるわけではなく、坑道の広い部分に、地面の上にワラを敷いただけで、集団でざこ寝をするという劣悪さ。その上、硫黄鉱なので坑内が暑く、全員が前隠しの布1枚を付けただけの全裸。週末まで妻とセックスできないため、子供や若者が相手をさせられるという悪習が横行している。12才になったアクラは、「死亡保証金」として500リラ(約15万円)を父が受け取る代わりに、8年間週6日タダ働きを強いられる。しかも、シチリアでは珍しく色白金髪なので、慰み相手として狙われる。そんな毎日に嫌気がさしたアクラは、採掘した硫黄を盗まれた責任を問われて激しく叱咤された後、逃げ出す。一度捕まり、父に激しく殴られるが、また逃げ出す。そして捕まり半殺しの目に遭う。その後に待ち受けるのは救いのない未来だ。

役柄が役柄だけに、フランチェスコ・クジマーノは、ごく普通の少年だ。演技も上手とはとても言えない(台詞が棒読み)。ただ、過去の陰惨な労働史を映像化するのに貢献した点だけは評価したい。


あらすじ

最初は、鉱山に行かされる前のアクラの日常生活が紹介される。何の楽しみもないが、それでも、後で体験する鉱山での毎日と比べると天国のようだった日々。家にはトイレもなく、外で用を足す不衛生な暮らし。食事はじゃがいもが基本で、唯一の動物性淡白は、アクラと弟が池で捕ってくる蛙。蛙といってもフランスのような食用蛙ではない。それが家族のごちそうとなる。
  
  

父と2人の大きな息子は、土曜も夕方までみっちり働かされ、6日ぶりに帰宅する。家に残った家族全員が村の入口に立ち出迎える。家に着いた彼らが最初にすることは、体に染み付いた硫黄の臭いを、たらいで洗い落とすこと。父は母が洗い、兄はアクラが洗う。来週アクラは12才になるので、兄が、「マウリーツィオ、次回はお前だ」と末の弟に言う。
  
  

そして、夕食。鉱山で働いている3人だけに供される僅かな肉片。もちろん他の家族はじゃがいもと蛙だけ。「来週は、僕も肉が食べれるんだよね?」とアクラ。「務めを果たせばな」と父。「カゴを200個 運ぶから」。カゴというのは、鉱夫が掘り出した硫黄交じりの石を坑内から外に運び出す籠で、重さは25キロ。200回運べば5トンになる。「地獄だぞ」と兄。「やってみせる」。
  
  

いよいよ初日。月曜の早朝、まだ外は真っ暗だ。起きてきたアクラに、「覚悟は できてるな?」と訊く父。「うん」。村から歩いて鉱山まで行き、1人の鉱夫、カラマッツァに引き合わされる。アクラを見たカラマッツァは、まず一発頬にビンタ。叩いてから、「言いつけを守らんと、ビンタが飛ぶぞ」。父が、「アクラは、ぶたれなくても言うことを聞く」とサポート。「そりゃいい」「他のガキが来るまで、ここで待て」「お前の父さんと話したら、戻ってくる」。実は、カラマッツァが、アクラを「死亡補償金」500リラで、父から買い取ったのだ。従って、アクラはこの鉱夫の占有物として働くことになる。日曜を除く毎日、それを8年間。そこに “他のガキ” が2人でやって来る。「新入りはベッピンだ」。「奪い合いだな」。「誰に、やられるかな?」。「トツッゾさ。何にでも、入れるだろ」。そして、アクラに向かって「いいか、ここでは良心も誇りもないんだ」。「誰かの慰み物になるってことさ」と話す。予想もしなかった展開に驚くアクラ。
  
  

カラマッツァに連れられて坑内を降りていくアクラ。少し広い場所に出る。「ここまでは服を着てていい。外の風が入ってくるから、涼しさが残る。ここで寝る。快適な場所だ。気持ちいいワラ布団もある。だが、ここから下は裸だ。でないと、高温で死ぬ」と説明する。「分ったら脱ぐんだ坊主。さっさと!」。そして、全裸になり、腰に前隠しの布を1枚だけ付ける。アクラは恥ずかしくてパンツがなかなか脱げない。でも結局は布1枚になり、さらに下へと降りる。狭くて急斜面の坑内。あちこちで鉱夫達が壁を大きなハンマーで叩いている。カラマッツァの所場に到着。「ここが、俺の採掘場だ。俺の硫黄。全部、俺のモンだ。お前を含めてな」「お前の仕事は硫黄を運ぶこと。荷揚げ場までな」。そして、「籠に入れろ」「十分だ」「かつげ」。「持てないよ」とアクラ。「1週間で、25キロ運べるようになれ」。「慣れるなんてムリだ」。「情けないガキだ。初日だからいいが、できるだけ早く慣れろ」。
  
  

次が、最初の夜のシーン。坑内だから昼も夜もないが、とにかく就眠の時間だ。狭い空間に溢れる人々。全員が前布1枚、異様な光景だ。怖そうな男性が、壁際にこっそり座るアクラを見つける。「こいつ新入りだな。金髪で。尻の穴も可愛いかな」と言って、触ろうとする。「やめてよ!」と立ち上がるアクラ。「硫黄付きのを入れてやる」。この危機は、兄が救ってくれた。少し、後のシーンだが、この男はアクラがあきらめきれず、兄に話しかける。「お前の弟は、いい尻してるな。あの子も慣れないと。鉱夫の宿命だ。週日はガキのカマを掘って、週末と祝日に かあちゃんとやる」。恐ろしい環境なのだ。さらに、後のシーンで、屋外でアクラが休んでいると、この男が隣に座り、「オリーブを4個、稼がんか?」。「まさか」。「オリーブ5個とイワシじゃ?」。「ダメ」。アクラの貞節の意志は固い。
  
  

アクラの始めての週末。一列になって鉱山から町へと歩く鉱夫達。いつものように村の入口で出迎える家族。母は、父から順番にキスして迎え、最後に残ったアクラに「お前も、一人前だね」と声をかける。硫黄を洗い落とす順番になり、「洗う側から、洗われる側だ」「マウリーツィオいいか、しっかりやれよ」。しかし、弟は反発して顔にタライの水をかける。「僕は疲れてるんだ、このバカ!」。食事では、初めて肉が食べられる。隣の弟に、「僕は肉だ。お前は、じゃがいもだけ」と自慢する。翌、日曜日。アクラは父達がいる酒場に入っていく。「おい、みんな!」「我らが新人の、お出ましだ!」とみんなから拍手で迎えられる。嬉しそうなアクラ。父がサインを出したので、「みんなにワインを!」と、大盤振る舞い
  
  

翌朝、アクラは鉱山に戻る。カラマッツァの下で1年前から働いている小太りの少年と話していて、硫黄を盗まれないように監視する役の時に、うっかり眠ってしまい盗まれたと打ち明けられる。「その時、何された?」とアクラ。「殴られた上に、死亡補償金で弁償。だから、親爺にぶちのめされた」。「契約は いつ終わるの?」。「あと7年だ」。「僕は8年だよ。19になるまで、ずっとカラマッツァと一緒。終わったらオーストラリアへ行く」。オーストラリアというのは、姉が嫁いだ先で、アクラにとっての理想の別天地なのだ。「こんな鉱山で、一生 働くもんか。絶対、イヤだ! オーストラリアへ行くんだ! 海だ!」。そして、次にアクラが監視役の時、硫黄が盗まれてしまう。居眠りから醒め、全部盗られていることに気付き、動転しわんわん泣くが、遂に決心し、カラマッツァに報告する。「硫黄が盗まれた」。「何だと?」。「全部、盗まれた!」。「こいつ、ぶっ殺してやる!」。ベルトで背中を滅多打ちにされるアクラ。
  
  

そして、アクラはいなくなった。アクラは家に逃げ帰った。母:「一家を、飢えさせるつもり?」。アクラ:「働くよ、オーストラリアで」。「バカ お言い。死亡補償金をもらっといて。お前は、もう自分のものじゃないんだ」。「僕は、僕だ!」。「可哀想だがね」。「戻るくらいなら、死んだ方がいい」。「意気地なし!」。そこに、父が入ってくる。「この、親不幸!」「バカ野郎!」「何てこと、しやがるんだ!」と殴られるアクラ。鉱山に連れ戻され、カラマッツァから一発殴られ、「もう 飽きたのか?」。アクラ:「殴られるから」。もう一度殴って「ロバを仕込むには、殴るしかない」「分ったか?」。返事をしないので、また叩かれる。「どうなんだ?」。アクラ:「さあね」。今度は父に殴られる。「分らんのか?」。逃げるだけあって、結構、根性が入っている。
  
  

しかし、坑内での「肉欲の奴隷」のような状態を目にしたアクラは、2度目の逃亡を企てる。今度は家に戻らず、村からも離れ、海を目指してやみくもに歩いて行った。野うさぎを抱きしめたり、木の実を食べたり、新しい体験を楽しむアクラ。一方、カラマッツァと父は警察に行き、捜査を依頼する。カラマッツァ:「俺は、死亡補償金を払いました。だから、俺には権利があるんです」。父:「そうです。補償金をもらいました。だから彼には、月曜から土曜までアクラを使う権利があります」。警察:「隠れているのか?」。父:「田舎に隠れてるんでしょう。他に考えられません。知り合いも、いませんから」。
  
  

アクラは池のほとりで釣をしている男に駆け寄り、「これ海?」と訊く。海を見たことがないのだ。「海が、どうした?」と男。「オーストラリアに行くんだ」。「お前、バカか?」。一方、アクラの捜査に警察が乗り出していた。2人組であちこち訊いて廻る警官。「金髪の男の子を見たことは?」。そして遂に、洞窟に隠れているのが見つかり、連行されてしまう。
  
  

家では凄惨な処罰が。「このろくでなし! 殺してやる!」と言って、首をつかみながら鉄拳をふるう父。まさに半殺しだ。途中で、見ていたカラマッツァが止めに入る。「もう やめろ! ほんとに殺す気か!?」。一家4人で鉱山に戻る。みんなに向かって「騒がせたな」と父。アクラに気のある鉱夫が、「また、やるかな?」と訊く。「二度と やらん」と父。「顔をどうした? ドアに、ぶつかったか?」。アクラは「壁に」と憮然と答える。気のある鉱夫は、「笑えよ。バカだな。人生は楽しいぞ。行こうな」とアクラの肩を抱いて坑口に向かう。それを、最初に、「誰かの慰み物になるってことさ」とアクラに話しかけた少年2人が、意味ありげに見ている。これでアクラの運命は決まった。ずっとこの男の慰み物になるのだ。映画は、いまだ見たことのない “海” に向かってアクラが歩いていく “見果てぬ夢” で終わる。
  
  

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